5時からサラリーマン(男)の生態

ジャンルはテキトウ、内容もテキトウ。思いついたまま書いています。

まるで、爪に蜂蜜を塗ったような、国立競技場とつくば総合運動公園の共通点

以前、大型建設Project(超高層ビルの建設)に関わった事があり、

国立競技場の予算のニュースを興味深く見ていました。
(以前、2次,3次会社として、民間の超高層ビル建設に関わっていました
今は、発注者側として、一企業(メーカー)のクライアントエンジニアとして仕事をしています)


なんで、こんなに予算がずれるの?

いやいや、予算額が倍になることなんて、よくある話。


大型建設PJでの予算の考え方について、私の過去の記憶、経験をもとに書いてみます。

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PJのスタートは、大型工事の場合、特に、意匠が求められる場合は、
設計コンペからはじまる。

コンペの参加者は、
工期優先であれば、ゼネコンがメイン。
デザイン優先であれば、設計事務所がメイン。

スタートの際、コンペ参加者には、予算総額○○億円以下、敷地の面積は○○平米、工期○年といったザックリした情報が与えられ、そこからスタート。

その後、デザイン等をもとに、業者が確定し、実施(詳細)設計に進んでいく。


実施設計になると、色々問題が出てくる。

設計者が意図していないような設計落ちや、
具現化していくことで、もっとこうしたいといった発注者のワガママが色々出てくる。

そうして予算がかさんでいく。

基本設計と実施設計の違いは何かというと、
基本設計のコスト算出をするのは、設計者が主。
実施設計のコスト算出は、施工者・ゼネコンが主となる。

実施設計では、具体的な材料や、その大きさ、数量等を明らかにし進めて行くため、設計者のみでは、コストの算出が出来ない。
その為、施工者に詳細の設計、コスト算出をしてもらいながら進める。

さらに、着工するにあたって、材料費の変動、仕様変更等の予備を見込み、それを予算総額としてスタート。


いざ、フタを明けてみると、それでも足らず、想定外の費用が発生する。

 

どうやって、基本設計と、実施後の総額の差を減らす、無くしていくかというと、
1.初めのコンペの段階では、
 何を費用に含んでいて、何を含んでいないのかという事を明らかにすること。

 実施設計に入ってからも、基本設計と、実施設計の費用の差について、原因は何かと明らかにしていくこと。


 実際に、私が過去に携わった案件で、あまりにも予算のずれが大きいので、基本設計時の考え方と、実施設計時の考え方について、確認をした所、実施設計の考え方がオーバースペックであり、基本設計の考え方に近づけ、コストを抑制できたこともある。

例として、過去の経験だが、
 基本設計では、変電設備は、既存再利用。
 実施設計では、変電設備を丸ごと更新。
 なぜ、丸ごと更新とするのかを確認すると、実際には、変電設備の再利用が不可能だったので、更新しか無いという事になっていたが、容量が足りない分だけ、増設という事で落ち着いた。

 なぜ、増設では無く、実施設計の段階で、更新と考えていたかというと、
増設をするには、広範囲かつ、長時間の停電が必要な為、更新しかないと思い込んでいた事が原因であった。

 その時は、○億円かかるなら、停電した方がましという判断をし、結局増設という事にした。


繰り返しになるが、基本設計時にどう考えていたのかを確認する事が大切なのだ。
何も考えていないようであれば、それは、基本設計時の、設計落ち。
又、それを見抜けなかった発注者のミス。


2.想定外を減らす
いかにして、想定外という事を減らすか、それが大切。
言い換えれば、言い訳出来る余地を減らすことが大切。


いや~、こんなに、鉄骨が必要だなんて、思ってませんでした。
とか、こんなに材料が高騰するなんて、、、等々

言い訳できる余地を無くすのだ。

1.とも関係するが、
特に、
基本設計の段階で、何を想定していたのか、
あるいは、何を想定するかが大切。


想定外を、想定外のまま、進めるのはプロの仕事ではない。

 

国立競技場はとても大きなProjectなので、
例として、身近?!なつくば市の総合運動公園ですると、
つくば市の総合運動公園の立地は、
駅から遠くしかも、道路渋滞が予想される為、市は、道路を拡幅し対応する考えがあるとの回答をしている。

総事業費として、305億円と見積もられているが、
この道路拡幅の費用は、その中には、含まれていない。

道路の分は、公園とは直接関係ないとの言い訳もあるかも知れないが、
それでは、総事業費とは言えない。

つまりは、
設計落ち、計画不足。

つくば市総合運動公園について、過去に書いた記事はこちら

client-engineer.hatenablog.com


あれどうなってるんですか?
これ、どうなってるんですか?
この場合、どうなるんですか?

との市民からの質問に対して、市長、市から応答は行われているが、
実際のコストは、見ていない。

コストについての考えも、責任も無くただ、その場しのぎの回答をしているようにしか思えない。

このような、初期段階で、落ちが見つかるProjectは、
進めれば進めるほど、もっと予算が必要になる。


そもそも、
・総合運動公園は誰が必要としているのか?
・なぜ、必要なのか?

・今の計画のもの全てが本当に必要なのか?
・他に代替出来る方法は無いのか?
・無いとどうなるのか?
・あると、どういうメリットがあるのか?
・それは、維持費も含め持続可能なのか?
・今の総事業費では、どういったものを見込んでいるのか?
 逆に見込んでいないものは何なのか?
・見込んでいないものが出てきたら、どういう対応をするのか?
・見込んでいないものの、おおよその予算は?

等々を確認し、
あったらいいなというものをそぎ落とし、
本当に必要なものは何なのか?を見出し、その上で、進めるべきだと思います。

 

どうしても、国立競技場の話ばかりになってしまうが、
過去には、
1997年7月から、計画のはじまったスコットランドの国会議事堂建設では、
当初予算が、4000万ポンド。

1999年6月には、予算を1億900万ポンドに変更。
2000年4月には、予算を1億9500万ポンドに変更。
2001年11月には、予算を2億4100万ポンドに変更。(当時、これが最終見積とされた)
その後も、
2003年6月に、予算を3億7580万ポンドに変更。
最終的に、
2004年に新議事堂は落成し、総工費は、およそ4億3100万ポンド。

つまり、当初予算の約11倍。

詳細は、ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンの著書ファスト&フローの下巻参照。

 

 

 

 

 

国立競技場とつくば総合運動公園の共通点は、

詰めが甘いこと。

ツメが甘い。爪に蜂蜜を塗る。。。

失礼しました。。。