発売されること自体も、賛否両論あるこの本。
私が購入して読んだ理由は、”気になったから”
スマホにプッシュされてくる産経新聞ニュースから、
神戸連続児童殺傷事件 元少年A 手記発売 タイトルは絶歌
という様なものが流れて、目に入ってきた。
その後、テレビで、その事が放送されており、
もう、気になって仕方なくなってしまった。
どんなことが書いてあるのだろう???
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元少年Aに対しても、猟奇的な事件に対しても、
私自信、興味は無し。
もっというと、これに限らず、サスペンスも見ないし、
芸能ニュースも興味無し。
ただ、漠然と、どんな事が書いてあるのか気になっていた。
格好良く言うなれば、知的好奇心。
悪く言えば、野次馬根性。
人気がおさまったら、古本で買おうかなとでも思っていた。
そんな時、ふらっと本屋さんに行ってみたら、売っていた。
(なぜ、周りの目を気にするのか?俺、と思いつつ)
本を手に取り、立ち読み。
タレント本にありがちな、文字の大きさが大きかったり、
行間が空いているなんて事は無く、
文字がぎっしり。
こりゃ、立ち読みは無理。
買うしか無いか?
と、悩む私。
なぜ、買うのを悩んだかというと、
周囲の目。
この本を、私が買って読んだ事を妻が知ったら、どう思うだろう。
決して、いい印象は受けないだろう。
元少年Aに殺傷されたお子さんを持つ、家族の方に対しても申し訳無い気がする。
そう思って、本を、棚に戻した。
企画書の書き方だとか、PowerPointの使い方といった様な、
あたかも、やる気はあるけれど、頭と手が追いつかないといった、
私の様な中年おやじが買いそうなビジネスジャンルの棚に移動。
いい本無いかな?と思いつつ、パラパラと、企画書の書き方の本を立ち読み。
しかし、頭の中から、あの本の事が気になって離れない。
気になってしょうが無い。
気になってしょうが無い。。。
もう、降参。
買う事にした。
私が、買った本は、
元少年Aが書いた絶歌
それと、本屋さんの同じ棚に並んでいた
元少年Aの親御さんが、書いた
「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記 (文春文庫)
- 作者: 「少年A」の父母
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/07
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 82回
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家に帰って、家族が寝た後、一人夜中に、絶歌を読んだ。
前置きが長くなったが、
読んで思ったのは、
更正って、なんだろう?ということ。
元少年Aは、更正したのだろうか?
人殺しは、もうしないのか?
人を傷つけることはしないのか?
生物を傷付けはしないか?
更正という言葉を、辞書(大辞林)を引くと
” 正しいものに改めること。”
書いてある。
人を殺さなければ、更正?
人を傷つけなければ、更正?
生物を傷つけなければ、更正?
元少年Aに求められていることは、なんなのだろう?
”立派に更正して”と言われているのかも知れないが、
・人を殺さないこと
・人を傷つけないこと
・生物を傷つけないこと
以外に、彼に求められているものは無いのかも知れない。
人から、期待されず、必要とされず、
生活をするのは苦しい。
保護観察期間がはじまったばかりのタイミングで、清掃の仕事をする中で、
仲間から頼りにされた事が、とてもうれしそうに書かれていた。
ゴミの袋集めをする際、年配の仲間から、
若者が来て良かったと言われ、喜ぶ元少年A。
床磨き用のポリッシャーを、うまく扱えない仲間を見て、
少年院でポリッシャーを扱った事のある元少年Aが、
こうやって、やるんだと、うまく使いこなし、周囲から、元少年Aへの見る目が変わったこと実感する元少年A。
しかし、ずっと、その場にいることは許されない状態だった為、
保護観察期間が終わってからも、
建設業、溶接の仕事等の仕事を転々とする。
現在に近づくにつれ、文章に勢いが無くなっていく。
保護観察期間中は、少年院のスタッフや身元引受人から、更正して欲しいと、期待され、
そして、更正へと歩む、元少年。
元少年Aは、期待されている事を、感じ、それを、楽しみ、喜んでいたのだろう。
しかし、正式に出所し、数年経ち、一人になると、
自分に対して、期待してくれる、頼りにする人が少なくなっていく。
建設業では、元少年A曰く、まじめに仕事をしていたこともあり、自分はリストラされない。そういたが、景気が悪くなると、すぐにリストラされる。
その後、溶接の仕事では、元少年Aの溶接の腕前、仕事ぶりに感心し、
慕ってくる中国人労働者の後輩が出来、熱心に仕事を教えるようになる。
(この時、元少年Aは、自分が期待されていると思っていたようだ)
しかし、ある日、中国人労働者から、一緒に写真を撮ろうと言われ、
写真嫌いな元少年Aは、
使い捨てカメラで、写真を撮ろうとする彼に苛立ち、カメラを取り上げ、床に叩きつける。
さらに、親しくしてくれた先輩に対して、
なんとも言えない、気持ちになり、距離を置く。。。
そして、人から、期待されなくなっていく。
親御さんからも、孫の顔が見てみたい
なんて事は、期待されていないだろう。
遺族から慰謝料として、請求されている金額の返済も、
彼には期待されていないだろう。
(親御さんが一生懸命返済されているらしいが、元少年Aには期待されていないだろう)
彼が、この本を出版しようとした理由として、
”自分の過去と対峙し、切り結び、それを書くことが、僕に残された自己救済”
とあるが、
モンスターとしての彼が、
第三者に、人殺し以外のことで、
人に応えられる手段として、本を出し、
自分の居場所をつくること、
期待してくれる誰かと繋がる事のために必要なことだったのかも知れない。
ブログを書けばいいという意見もあるが、
あえて、”本”にすることで、
昇華させたのでは無いだろうか。
ブログであれば、アクセス数が評価の一部にはなるが、
そのうち、本当に読んでもらえたかは分からない。
本であれば、購入した人は、
読み飛ばすことをせず、一通りは、目を通すことだろう。
又、販売部数が、一つの評価にはなるだろ。
版元の太田出版に対して、批判的な意見もあるが、
私自身は、本として世に出すプロセスの編集、校正をすすめるにあたって、
元少年Aと向き合い、彼を人として認めなければ出来ない事であり、
元少年Aの居場所を提供したという事では意義があると思う。
ただ、気になったのは印税の使い道だ。
彼の両親が書いた、
「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記 では、
”本の印税等は、すべて被害者の方々への償いとさせていただいております。”
とあるが、この本(絶歌)には、印税の記載が無い。
本の中でも、元少年Aが、お金に執着はしていないが、
無駄遣いをしないことで、貯金がそこそこある事が書かれている。
償いとして、被害者のご家族へ毎年、手紙を書いていることの記載はあるが、
慰謝料の支払いについての記載は無い。
頼む、印税を、償いにあてて欲しい。
元少年Aにその意志が無いのであれば、太田出版よ、
版元がその何割かを当てるべきだ。
お金では解決出来ない事があっても、
お金という誠意が必要なこともある。
関西の方が、”誠意を出せ”と迫るときは、
お金を求めるときではないか?
(そうで無い人もいるかも知れませんが、私のビジネスの経験上、
誠意が無いと言われたときは、お金が足りないという意味で使われることが多いです)
関西人の元少年Aに、その”誠意”を教えてやってはくれないだろうか。
以下、読んで気になったものを記します。
1997年6月28日。
僕は、僕ではなくなった。
陽なたの世界から、永久に追放された日。
いてもいなくても誰も気付かない。それが僕だ。
どの学校のクラスにも必ず何人かはいる、スクールカーストの最下層に属する”カオナシ”のひとりだった僕は、この日を境に少年犯罪の”象徴(カオ)”となった。
僕は、カタツムリになり損ねた、自分を守る殻を持たないナメクジだった。
人間は時に、”ツクリモノの感情”を発露させてしまう不可解な習性を持っている。心の奥から素直に湧き出た”ナマの感情”が先にあって、いろいろな理屈付けを試みながらそれに振り回されているうちはまだいい。”厄介なのは、自分の脳内で無意識下に生成された”未確認思考”が「自分でも思いもよらないような”感情を伴わない感情”を発動させ、そのハリボテの感情がまるで自分の中から自然に湧き出た物であるかのように振る舞い、肉体の音頭をとっている時である。あなたが普段抱いている怒りや喜びは、本当にあたなの体内から湧き出ている”純度百パーセント”の感情だろうか?そこに、”不純物は一ミクロンも混ざっていないと言い切れるだろうか?
快楽とは生命の充実感でなくして何であろうか。
大藪春彦『野獣死すべし』”快楽の定義”についてこれほど完璧に書かれたものが他にあるだろうか?
「外見はいちばん外側の中身」だといっただろう。言い得て妙だ。人間の内面は驚くほど外見に反映される。
--もし、本当に罪が償えると思っているなら、それ傲慢だと思うし、所詮言い逃れに過ぎない。--
淳君のお兄さんがドキュメント番組で口にしたこの言葉が、僕の見上げる空に響き渡る。
いざ”自由”を与えられてしまうと、何をしていいのかわからなくなる。選択肢が増えすぎると逆に何も選べなくなる。”決定回避の法則”だ。「山谷ブルース」を歌った岡林信康によれば「自由っていうのは空に浮かんでいる凧」らしい。
糸を切れば自由になれるか? 糸で地上に繋がれているからこそ空を飛べるのであって、その糸を切ってしまうと落ちるしかない。自由とはそういうものだ、と”神様”の至言だ。
大人になった今の僕が、もし、十大の少年に「どうして人を殺してはいけないのですか?」と問われたら、ただこうとしか言えない。
「どうしていけないのかは、わかりません。でも絶対に、絶対にしないでください。もしやったら、あたなが想像しているよりもずっと、あなた自身が苦しむことになるから」
哲学的な捻りも何もない、こんな平易な言葉で、その少年を納得させられるとは到底思えない。でも、これが、少年院を出て依頼十一年間、重い十字架を引き摺りながらのたうちまわって生き、やっと見付けた唯一の、僕の「答え」だった。
元少年Aは、この作品を書くことを、楽しんでいた様子がうかがえる。
途中、ペーパークラフトの作品のことを”作品”という文字にルビをふり、”こども”と書いている。
他にも、ちょっと、自分に酔っているなと思う節が出てくる。
仕事をしても、自分は器用に出来るという様な事を、遠慮無く書いている。
もし、反省を促す校正担当者だった場合、これらの文章は削られていただろう。
(あえて、焚き付けて書かせたとは、思いたくはないのだが)
良い意味でも、悪い意味でも、この本は、生々しい本だ。
読んだ後、落ち着いていられなくなり、その日は、深く眠れなくなった。
もし、元少年Aが、文筆に目覚め、
次に作品を発表しても、私は買わないだろう。
今回、売れ行きが良かったとしても、
あくまでも、元少年A本人が初めて手記を出したという強烈なコンテンツがあったからであって、二番目以降は、その価値が薄まっていく。
ちきりんさんのブログに
本を作り、ある程度 売ろうと思うのならば、必要なこととして、
コンテンツについての説明が書かれています。
今後、元少年Aが、どう生きていくのかは、気になるが、
もう、それは、私の関心の輪から外れる。
「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記 (文春文庫)
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人から、何かを過度では無く、ほどよく期待され、そして頼られる。
それこそが、ありがたいことなんだなと思う。
(驚き桃の木 20世紀という1990年代のテレビ番組で、エンディングテーマとして流れていた
〜Far away〜/BEYOND の歌詞を思い出した。
”人は皆ひとりきりじゃ生きてゆけないから”)
Beyond (ビヨンド) 遥かなる夢に ~Far away~ - YouTube
いつもは、妻から、家の掃除を頼まれると、うるせ~な!!!
と思っていた私であったが、
この本を読んでから、人に頼られることのありがたさを感じ、
ボケーッとしてるなら、自分で、掃除しろよと妻に対して、思いつつも、
俺を頼ってくれるだけ、ありがたいな、
そう思って黙って掃除した小さな自分がいます。
後日、続きを書きました。
client-engineer.hatenablog.com