”降参見積”って聞いたことありますか?
建設業の営業、設計、積算部門、あるいは現場で仕事をしていたなら、
”降参見積”の存在を知っている人が多いと思う。
建設業の変な掟として、
”出来ません”と言わない、言えないという事があります。
もし、出来ませんと言って、断ったら、
もう、お前の所には頼まない。
そう言われ、次から、声を掛けられなくなり、
仕事が来なくなってしまうこともしばしば。。。
見積の依頼を受けたときに、
明らかにやりたくないな、出来ないなと思っても、
見積は提出しなければならない。
もし、受注したくないのに、受注されてしまったら、本末転倒。
そんな時には、”降参見積”をする事になります。
事例1.忙しくて、これ以上仕事を受けたくない時
労務単価を3倍にしたり、もっと確実に受けたくなければ、10倍以上にして、
受けたいのは山々なのですが、今は、人がなかなか集まらなくって。。。
と断った上で、見積を提出。
事例2.設計がひどくてまともに見積もれない
見積用の設計図を見ても、設計図の質がひどく、
機器、材料の材質や数量を見積る事が出来ない場合は、
好き勝手に、条件を付けて見積をします。
例えば、通常だったら亜鉛メッキなのだが、図面に材質の記載が無い場合は、
”○○については、ステンレスとして見積致しました”と記載し、ステンレスの単価を入れたりして見積をする。
壁の厚みの記載が無ければ、100mmでいいものを、300mmにしたり、なるべく高めに考えて見積もる。
図面の質がひどい設計事務所の場合、
図面に書いていない事も要求される事が多いので、
なるべく単価が高い材料を選んだり、
数量については、多めに拾って、積算をする。
あとで、見積を精査され、指摘をされたら、
「この図面では、記載されていない事が多くて、リスクを考慮し、こう見積もりせざるを得ませんでした」と言って、その場を納める。
建設業の見積の鉄則は、増は大きく、減は少なく。
事例3.何が何でもやりたくない。
新国立競技場の様な、実現するのが難しいもので、
もし、言い値で受注したら、会社にとってとんでもないリスクになるという場合は、
材料費を積み上げて見積もるのでは無く、
これだったら、ムリって言ってくるだろうという金額を考え、
それにあわせて見積をする。
例えば、基本計画の倍とか、3倍とかにして、見積を提出する。
1.5倍だとやってくれと言われる可能性があるので、
2倍、3倍にするのが一般的。
理由は後から付ければいい。
だって、やりたくないのだから。
・基本設計の金額で出来るでしょ?と言われたら、
いやいや、○○で、難しいですよ。
・もうお前の会社には、今回の件は頼まない!と言われたら、
ラッキー!!!
内心ガッツボーズである。
他の会社に頼んでもらった方が、見積を受けた会社としてはうれしいのだ。
・もし、高くても構わないので、やって欲しいと頼まれたら、
お金があれば、何とか出来る、ダー!!!
のノリで、必至に取り組む。
それだけの費用があれば、自社だけで無く、他社の知恵、力を借りることも出来る。
私は、今、施主側として仕事をしてますが、
やけに高い見積を提出してきた取引先には、
「やりたくない?」
「図面の質が悪かった?」
「今、忙しい?」
と聞くようにしてます。
それでも、ハイと言ってもらえない場合は、
ひょっとして、”降参見積”?と聞くことにしてます。
施工者側の本音を知らずして、予算を立てるのは、危険。
今回の新国立競技場について、
ゼネコンの見積は、”降参見積”だと私は思ってます。
政治は、いち早く、”降参見積”の存在に気付いて、
GO,STOPの判断をし、
STOPならばSTOPで、
別な案を、基礎工事をする前に、建てられるようにしなければならない。
上物が決まらず、
構造計算が行われる前に、基礎工事を行わなければならない様な自体になったら、
国が、建築基準法を犯すことになってしまう。
あ、そうそう、確認申請にかかる期間、杭の手配にかかる期間も忘れずに。。。
(建物の規模にもよりますが、確認申請の期間は約3ヶ月、杭の手配は、約2ヶ月程度かかります)
私も、自分が関わるProjectがこうならないように、気をつけなければ。。。